脾・三焦                       


担当 山崎 (関西鍼灸大学)

脾の主な生理機能とは、運化作用と統血作用と昇清作用と降濁作用と生化作用であり、四肢、肌肉、口唇と密接な関係があります。ここでいう脾は、現代医学の脾臓とは大いに異なり、膵臓に近いものです。

・生理機能

生理機能には、運化作用と統血作用と昇清作用と降濁作用の4つがあり、それぞれについて説明します。

(運化作用)−運化作用とは、気や血や津液(水液)を全身に送り出す作用です。この作用がうまくいかないと、消化・吸収の異常や津液の停滞などの症状が起こる。

(統血作用)−統血作用とは、脾気(営気)が血液と共に脈中を流れることで脾気の固める作用によって血液を脈外へ出ないようにする。この作用の働きが悪くなると、血液が脈外に漏れ、出血や血便や血尿などが起こる。

(昇清作用)−昇清作用とは、運化作用において、吸収したものを胃から上の肺へ送ることをいう。また、内臓や器官は、骨に結合してその位置を維持しているわけではなく、位置が下がらないように肌肉の力で支えられている。それに昇清作用で気血を送っているが、その作用が低下すると、肌肉の力が弱くなり、位置を支えきれずに内臓が下垂することがある。

(降濁作用)−降濁作用とは、人体にとって不必要なものを降ろし、腸へ運搬されて排泄されることをいう。


・脾は主に消化系の働きをしている。

 脾と胃は、五臓六腑の中で最も密接な関係にあり、協力しあうことにより飲食物を消化・吸収している。胃に入った飲食物から栄養を取り出して、転化されて穀気を作り出す。この穀気は後天の精気と呼ばれ、人間が生きていく上での主なエネルギーとなる。

さらにこの後天の精を肺へ送り、気血津液に変化させ、全身に送り出す。(運化作用)脾の働きによって吸収される栄養物には営気が蔵され、運化を司る。営気が血と共に脈中をめぐることにより、血が脈外に出ることを防ぎ、(統血作用)また、全身に栄養を与える活力のもととなる。脾がうまく働かないと、消化・吸収の異常が生じ、腹痛・下痢などの症状が起こる。

a、四肢を主る。

 四肢は肌肉が豊富で、脾の運化作用によって運ばれた後天の精気によってその運動が正常に行なわれる。

b、脾は肌肉を主る。

 肌肉は、脾の運化作用で得られた栄養物によって豊かに充実し、その機能を充分に発揮される。

 肌肉とは、現代医学では筋肉のことであり、脾の運化作用が失調して栄養の供給が低下すると徐々にやせてゆく部分が肌肉と考えられる。そのため、不調になると肉づきがやせ、四肢無力になる。

c、口唇を主る。

 口と唇は、飲食物の取り入れ口で、脾胃と密接な器官である。唇の厚薄は、その人の脾の強弱を表す。脾の働きが正常ならば食べ物をおいしいと感じることができるし、唇やそのまわりの色つやがよい。脾の働きが正常でなくなると、食べ物をおいしいと感じられず、唇やその周囲や口内が荒れるなどの症状が生じる。

d、脾は津液を主る。

 脾は、後天の精気から津液を吸収し、肺に送る。脾は、津液を作り出し、全身に循環させる。(運化作用)脾の働きが悪いと、津液の不足や停滞が起こる。そのため、脾が弱ると浮腫が見られるようになる。

e、脾の液は涎(よだれ)である。

 脾は口と通じているため、その口から出る涎は脾の液である。脾の働きが順調であれば、涎により口中は潤い、食べ物を口に入れた時、涎は、ほどよく口中に流れて胃の消化を助ける。脾の働きが悪くなると、涎が流れずに、口中が乾いたり、あるいは、流れすぎて口中にあふれるようになる。

・ 脾と肝との関係

脾が血を生成し、その血は肝に運ばれて貯蔵され、血流量を調節する。肝の構成成分である肝血も脾で生成された血によって補充されている。

・ 脾と三焦との関係

三焦は水液の通路であり、特定の器官を指すのではなく、飲食物を消化吸収し、これから得られる気血津液を全身に送り、水分代謝を円滑に行なわせる一連の機能を指し、みぞおちから上を上焦、みぞおちから臍までを中焦、臍から下を下焦と分けられる。

 脾や胃は中焦と関係が深く、その働きは、飲食物を胃に取り入れ、そこから得られる後天の精気を血や営気に変える働きがある。

・ 脾と腎の関係

 脾は運化作用により、後天の精(水穀)から人体にとって有益な津液を生成・吸収して全身に運んでいる。そして、その不要な津液を腎により腎気の気化作用によって尿に変えて排泄し、必要な水分を再吸収している。

(その他の脾と腎の関係)

先天の精は、腎精として腎に貯蔵され、生殖や発育を支えている。出産後は脾の運化作用で生成された後天の精が気化して腎精を補充している。また、脾が冷えて機能が低下しないように、腎陽によって温められている。

・ 脾と心の関係

 脾は、後天の精(水穀)で血を生成し、心を中心に全身に循環し、循環の途中で脈外にもれないように脾の統血作用で統血している。脾で生成された血の一部は心血を補充している。

・ 脾と肺との関係

宗気は、肺の呼吸によって吸入された自然界の清気と脾の運化によって吸収した後天の精(水穀)により生成される。

また、肺気および宗気の宣発作用や推動作用は、脾気の運搬力を促して、運化を助けている。

 その他に、脾は吸収した津液を全身に運んだり昇清作用によって肺に運ぶ。肺に運ばれた津液は宣発・粛降作用によって全身に散布される。

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