今回こうして旅行をしながらホームページを開いていくという企画は「やってみれば面白いだろう」と思いつき程度で計画しました。

 通信のための環境確保はプロバイダーさえ、世界各地にアクセスポイントがあるところと契約しておけば「何とかなるだろう」とアバウトな考えのもと、AOL(アメリカン・オン・ライン:世界各地にアクセスポイントがあります)に変更したりと日本でそこそこの準備をしてきたのですが、ふたを開けてみると結構大変でした。苦労しています。

 バックパッカーというか貧乏旅行というか、経費節減のため安宿を選んで旅をしている我々の泊まる部屋には電話が付いているということはまずあり得ません。シャワー・トイレは共同があたりまえ、ドミ(ドミトリーの略)という相部屋を利用することもしばしばというスタイルの旅行ですから、泊まっている部屋で居ながらにしてi-netを駆けめぐるなんてことは夢のまた夢です。

 旅の最初の地点、ロサンゼルスはサンタモニカではぼくはまだ甘い希望を捨てずにいました。泊まっていたのはユースのドミですから部屋には当然電話はありませんでしたが、まあちょっと工夫すればモジュラージャックは確保できるだろうと考えていました。

 まずは、フロントに回線を使わせてくれと頼んだのはあっさり断られたので、それではと、街に出て郵便局、図書館、電話屋さん、インターネットカフェ、コピー屋さん、パソコン屋さん、etc。 思いつく限りのところを半日以上かけてたずねまわりました。もちろん、その間も公衆電話をチェックすることも怠りませんでした。

 でも、結果はオール没。インッターネット発祥の国 アメリカ合衆国において回線の確保もままならないという現実を知ってブルーな気分になったのでした。

 日本では最近、当たり前のようにモジュラーソケット付きの公衆電話がありますが、海外でも都心部に行けば少しはあるだろうと期待していたぼくは、考えの甘さを痛感させられました。公共的機関からもモジュラージャック付きの電話回線を借用することはかなり困難であるということが判明しました。

 まいりました。さしあたりこの時点でぼくがとった手段は、LAに留学生として暮らしている大学時代の友人の家に転がり込んで、モジュラージャック付きの電話回線を使わせてもらうという少々姑息的なものでした。

 そして友人と相談した結果、今後のことを考えるとやはりテレカプラー(音響モデム:昔からのパソコンユーザーの方はご存じかと思いますが、直接電話回線に電気的信号でjunkするのではなく、電話の受話器に抱き合わせのまさにアナログの音声でデータのやりとりをするというローテクな機械です)は必要だろうということで、その購入も決意しました。

 テレカプラーについてはその購入の時点から苦労しまして、ロサンゼルス市内のパソコンや、大型電気店を数件探し回ったあげく、店員にも「そんなものは聞いたこともない」という聞き慣れたセリフを聞かされた5件目の大型電気店の片隅に奇跡的に発見したというような有様でした。

 で、なんとか手に入れたテレカプラーですが、28.8bpsのfax modemが標準であった頃からパソコンを触り始めたぼくには昔の道具であったこともあって、実際にそれを使ってi-netに接続するのにはまた苦労の連続でした。

 アメリカの公衆電話は市内通話が15分まで35セントですが、ぼくは5通ばかりのメールを送受信するまで、5ドル近くの硬貨を消費してしまいました。

 参考までにその状況をお話します。ご存じのようにモデムというのは自分で電話番号の発信音を出して、回線に接続をしますが、公衆電話のなにがしかの特性のためでしょうか、サンタモニカの公衆電話は我がパソコンのカードモデム+テレカプラーが発するダイヤル発信音を認知してくれませんでした。で、どうするかというとアクセスポイントへのダイヤル発信音は、まさに手動で電話のプッシュボタンを自分で押して電話接続を図るのです。

 この方法で回線を通してプロバイダーの認証を得るためには

・硬貨を入れる

・パソコンの接続開始コマンドを出す

・手動でプッシュボタンを押す

の3つがかなりの精度でシンクロしていなければなりません。そのコツを体得するまでぼくは深夜のユースの電話コーナーで、目を血ばしらせながら小銭に握りしめ「Damn' it」とか「Sit bag」とか唸りながら電話機に寄進を続けたのでした。

 ぼくはパチンコとか馬とかいわゆるギャンブルはやらない方なのですが、このときばかりはカジノでスロットルマシン相手に身を持ち崩す人の気持ちがわかるような気がしたのでした。

 ところで、このテレカプラーによる方法は苦労して接続に成功しても、通信速度がパソコンの上限設定で4800bps程度とかなりお寒いですし、信号のやりとりが不安定なため接続していても突然、接続が断れたりしますし、またメキシコのように一度の硬貨投入で3分間しか通話できない電話では、メールのやりとりがせいぜいでホームページのファイルをアップロードすることなんてほぼ不可能です。

 現実にぼくが使っているもうひとつの方法は、宿屋、一般家庭などのソケットが付いた回線をそれなりの使用料を払って使用するよういうもので、こちらの方がベターな方法です。今はメキシコシティーのペンション・アミーゴというところにいるのですが、そこの母屋のファックス回線があまり使われていないのでそれをお金を払って使わせてもらっているという状況です。

 ちなみに、その料金はというと電話の使用料が1分間2ペソ(約32円:実際の市内の通話料はもっと安いはずですが、色を付けてということでこの値段になりました。でも、ちょっと高すぎたと後悔しています)。あと、メキシコにはAOLそのもののアクセスポイントはなくグローバルネットという一種のローミングサービス(とぼくは解釈しているのですが詳しいことはよく分かりません)を使うのでその料金が月々の契約料とは別に1分あたり12.5円かかります。合計でインターネットを使用するには1分あたり44.5円というかなり厳しい料金設定になっています。この宿の一泊の宿代が朝食込みで30ペソ(約480円)ですから、ネットに接続しても必要なファイルやメールの送受信をするだけでゆっくりブラウジングを楽しむわけにはいかないというのが現状です。

 近くのもう少し安い値段で回線を使わせてくれるところを探すという手もないではないのですが、この治安の良くない街をノートパソコンかかえてうろちょろするというのはできれば避けたいことなので、現状に甘んじているというところです。

98.6.7 from Mexico city

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