| カナディアン・ロッキー。自然の手になる「万里の長城」。 |
バンフやレイク・ルイーズの喧騒を離れ、ハイウェイ93を西に向かう。バーミリオン・パスを超えると、そこからラジウム・ホットスプリングスに至る長さ南北約100キロの領域がクートニィ国立公園だ。
マーブル・キャ二オンを訪れる観光客の多くは気にも留めないだろうが、その散策範囲にあるペイント・ポット(1450m)から、クートニィの西北をガードするバーミリオン山脈を垣間見る事ができる。それがロックウォールだ。 |
キャッスル・ジャンクションからヒッチハイクして、マーブル・キャニオンに着いたのは昼過ぎだった。。
簡単なランチの後出発し、その晩はオーカ・クリークにキャンプした。
夜から雨が降り出し、翌日も天気は回復しなかった。
ロッキーの雨は高山帯では雪になる。
完璧な雨具はない。立ち止まると直ぐ身体が冷えてしまうから、あまり休憩も取らずにもくもくと登る。ただ次の日の好天を期待しながら、ヘルメット・クリークを遡る。
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ようやくヘルメット・フォールズ・キャンプサイト(1760m)に着いた。正面のライムストーン・ピークに新雪が見えた。
人気はなかった。
何もかもぐっしょり濡れた。先ずはワーデン・キャビンの軒下を借りて、一杯のコーヒーを沸かす。入り口はロックされ、詰めている人もいなかった。
雨の中大急ぎでテントを張る。そして、雨中の夕食。
夜半、何者かの叫び声を耳にして、ぞっとした。じっとして、小さくなって朝を待つだけだっ
た。 |
翌朝になって2人の人間に会った。地元ゴールデンから来ていた中年カップルだった。さして広
くないキャンプサイトで、朝になるまでお互いの存在に気が付かなかった。
この日家に帰る2人から、車に同乗させてくれるとの申し出があった。レイク
・ルイーズかどこかで暖かいベッドに寝られる。
雨は止まなかった。撤退の為の正当な理由はないか。
それが、あった。バックパックのショルダー・ストラップの片方が取れ掛かっていた。直す道具は持ち合わせていなかった。それを自分への言い訳にした。
レイク・ルイーズの小さなショッピングモール。アウトドア・ショップでステッチャーを見つけて買い込む。そこからヨーホー国立公園のウィスキージャック・ホステルに送ってもらって、のんびり滞在しながらバックパックの修繕をした。
*ステッチャー: 千枚通しのような裁縫道具。蝋引きの糸巻を内蔵し、分厚い革でもプラスチック板でも突き通して縫える道具。 |
次の年の秋、再びロックウォール・トレイルに向かった。
その年は太陽がいっぱいだった。10月に入ると、麓から見る山々は一気に黄葉に染まった。
ヘルメット・フォールズでは前と同じ場所にテントを張った。夜になって火を燃やしていると、2人の男がやって来た。1人が小さなウイスキー・ボトルを差し出した。お互い酔いが回ってきた頃、兄貴格の男が言った。
「疲れていて自分で火を起こすのが面倒だった。ウイスキーが役に立ったよ。
」
翌日、ヘルメット・クリークからの登りの先に、目も眩むばかりの黄金色に輝くカラマツの木々が待って
いた。
はやる気持ちを抑えながら、ゆっくりと確実に登る。
注:現在ヘルメット・フォールズではキャンプファイヤーは禁止となりました。 |