標高4500mに迫るアメリカ本土最高峰マウント・ホイットニー登頂は、
長い間夢として想いを膨らませてきた。
サンフランシスコからグレイハウンド・バスでインディペンデンスに向かう。一旦バスはネバダ州に出て、リノでLA行きのバスに乗り換える。
再びカリフォルニアに入る手前の休憩地点で問題が発生した。預けたバックパックが貨物室に乗っていないのに気付いたのだ。しかしバスを引き返す事など出来る筈もなく、仕方なくそのままインディペンデンスへ行った。愛着ある登山装備から着替まで一切なくし、着の身着のまま取り合えずユースホステルに逗留する。
リノのグレイハウンド・オフィスに電話すると荷物が積み遺されている事が分かり、取り返す目処はついた。何とか装備の買い替えは免れた。
大切なバックパックは数日後に無事届いた。 |

ヒッチハイクでマウント・ホイットニー登山口の町ローンパインに向かう。直ぐ森林公園オフィスに顔を出し、登山許可をもらう。係官の話では、ベースキャンプから上は大量の雪が残っているらしい。例年の2倍もの積雪は予想外だったが、とにかく行ける所まで行ってみる、と決めた。
その日の晩は町外れのキャンプ場で過したが、砂漠の中の事、激しい暑さに寝苦しく、疲労した。
翌朝涼しいうちにアラバマ・ヒルまでテクテク歩く。そこはハリウッド映画のロケ地として有名な場所だ。
トレイルヘッドのあるホイットニー・ポータルへ、ヒッチハイクを試みる。最初に止まってくれたのは、山裾に点在する牧場へ行くピックアップ・トラックだった。
山の麓で次の車を待つ。ほどなくやって来たのは仕事でホイットニーに向かう若い山岳ガイドだった。彼は上に着くまでの間、楽しそうに山の魅力を語り続けた。 |
気温40度の砂漠地帯も、標高2500mを越えると幾分過ごし易くなった。
トレイルはいきなりの急登から始まる。数え切れないジグザグ。
頂上まで11マ イルの間に2つのキャンプサイトがある。無理せず、それぞれのキャンプに泊ま
る事に決めていたから、体を慣らしながらゆっくり登って行くが、途中右足に痙攣を起こしてしまった。休憩のため少し腰を降ろしてから、立ち上がろうとした瞬間だった。
先が思いやられた。
追記(重要):
2006年5月からマウント・ホイットニー・トレイルにおいては新しい
Human Waste Management 政策が適用されています。入山者は自身の排泄物を全て持ち帰る事(pack-out)が義務付けられました。
同時にクマ対策として、食料保管にベアー・キャニスター携行も義務付けられました。従来の食料袋を樹上に吊るす方法は完全に否定されたので、注意が必要です。
詳しくはUSDAフォレスト・サービスのHPで確認できます。
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最初のアウトポスト・キャンプで会った夫婦が1本のスキー・ストックをくれた。今回は奥さんの体調が万全でなく、上は断念して帰るという。 |
2日目。
足の調子も回復し、順調に高度を上げて行く。ミラー・レイクを過ぎると、いよいよ森林限界を越える。
稜線に出ると、垂直に切り立ったトール・ピークが迫ってくる。中腹に点在する木々は、岸壁にへばり着き、必死で登ろうとしているかのごとく見える。巨大なノコギリ状の山頂部は植物の進出を頑なに拒んでいるように見える。まさに木と岩が攻めぎ合う、ぎりぎりの場所だ。
コロラドのロングス・ピークに登った時は、高度3500mに近付くと強い息苦しさを感じたが、今回は大丈夫。
*ロングス・ピーク: 標高約4350m。ホイットニーに次ぐ高峰。ロッキー・マウンテン・ナショナルパークの主峰。 |
雪と岩だけのトレイル・キャンプに着いた。
見上げれば、空の蒼さが恐ろしいほど深い。
トレイル・クレストと呼ばれる稜線に続く大雪渓の上に、幾つもの黒い点が動いているのが見えた。ルートをじっくり観察する。次々に人が下って来る。その中で、意外にアイゼンを持つ人は少なかった。
自信が湧いてきた。 |