読者の方も、もうドメスティックバイオレンスはうんざりといった気分にさせら
れたであろう。しかし話は、まだまだ続く。
土曜の朝は爽快だった。私はブジュのレゲエを聴きながらコーヒーにパンケーキ
と「亭主元気で留守がいい!」一人きりのゆったりとした朝を迎えた。ところが
昼ごろになって上の階のカップルも目覚めたらしく、再びアビューズが始まった。
いつものように「Get Out!」の叫び声。ドアを開けて上を覗くと上の階のグラリ
スもドアを開けていた。
「グラリス。また、やってるようね。どうしようもないわねー。」と私。
「そうよー。彼女が彼を家に入れなければいい事なのに、どうして入れてしまう
のかしら。まったくクレージーよ!さっき警察に電話したから。」と、グラリス。
グラリスの部屋からは大音響のジャズが流れている。彼女も私と同様、日曜の朝
に音楽を聴きながらゆったりとした朝を迎えていたのだろう。パジャマにナイト
キャップを被ったままだ。
彼女への同情も怒りに変わってきた。「いい加減にしてくれ!」と叫びたいのは私
たち隣人のほうである。
警察が来るまでの間、彼女の叫び声は、殺されちまうんじゃないかっていうくら
い激しかった。私は、ドメスティックバイオレンスの証言に役立てばと、カセッ
トテープに録音。彼女はとうとう「Help Help Me!」と叫ぶ。映画に出てくる悪
魔にとりつかれた女性のように凄まじい声だ。その声はテープにバッチリ録音された。
この日は、大家さんのエマニュエルもアパートに来ていて、玄関の前をホウキで
掃いていた。しばらくして警察がやってきた。再び彼女の家のドアを叩く。今度
は数回のノックでドアが開いたらしい。警察が男に注意している。
「これ以上騒ぎが起こるようだったら、ここへは近寄れなくなるよ。」と警察の声。
しばらくして窓から外を覗いていると、アパートの玄関から暴行を加えた白人男
が外へ出て行く姿が見えた。白人男は、そこに居たエマニュエルと体格の良いブ
ローカー(不動産屋)の男性二人に言葉を交わす。白人男は顔をピンク色に染め、
エマニュエルに抗議をはじめた。するとエマニュエルはホウキを振り上げて攻撃
態勢に入りかけた。60歳は過ぎてるはずの小さな身体で20代の白人男に立ち
向かおうとする勇敢さはよいが、とても勝ち目がないなーと私はドキドキハラハ
ラしていた。まぁまぁといった感じでブローカーの大男が二人の仲に分け入る。
白人男は、ポケットに手を入れて顔を紅潮させたまま立ち去った。
直後にエマニュエルが階段を上ってくる音がした。今度は警察に文句を言ってい
るようだ。
「どうして連行しないんだ。彼女は危害を加えられていたんだぞ。」と、エマニュ
エルの怒鳴り声。
「私たちには、どうすることもできない。」といったことを警察が返答する。
数日後、エマニュエルに会った。
「エマニュエル、言われたとおり警察に電話したけど、どうなったの?」と私。
「男は捕まらなかった。まったく警察は無能だ。とにかく、また叫び声が聞こえ
たら警察に電話してもらうしか方法がない。」
私はレイの居ない間、その暴力白人男が警察に知らせたことを逆恨みしてたら怖
いな〜と不安な毎日を送っている。
と、いうわけでレイも暴力白人男に負けない腕力もしくは格闘技の技を身につけ
ておいて欲しいものだ。私も、日本の警察に柔道を教えていた叔父から柔道を学
んでおけば良かったと後悔。私の場合はこんな風に暴力を防御する方向を考える
が、以前レイの口から出た言葉は、
「彼女は銃を持つべきだ。男に立ち向かうには銃しかない。」と、アメリカンらし
い銃社会に賛成の意見。
「理由がなんであったにしろ、彼女が銃で彼を殺した場合、彼女は一生『人殺し』
として過ごさなければならないのよ。そんなの平気だと思う?」と私。
「でも、彼女は殺されるかもしれないんだ。殺される前に殺すべきじゃないの
か?」
水掛け論になってきたので、途中で議論をやめた。
ナチュラル志向なレイでさえ銃社会肯定派だということが残念である。
アメリカから銃が無くなることは不可能だな〜と再認識した。
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作者より
ハーレム・ゴスペル&ジャズ個人ツアーガイドも問い合わせ殺到!
いよいよHPにも手を入れてます。まだバグがあるので訪問したら
エラーメッセージが出ます。JAVAスクリプトの本を今日買いました。
そんな事やってる暇も無いのですがー・・・寝る間を惜しんでチマチマ
働く私なのに、何故、貧しいのでしょうか?